日本財団 図書館


 

の場所が斜めになっているということは、とんでもないことであり、そこからすべてが狂ってくるはずです。
船と水と空気の境界という、他の乗り物にない特殊なところを動くので、風のほかに波という厄介な相手にも悩まされます、、
波に同調して揺れる船、これが遠心力で傾斜しながら旋回し、さらに突風や大波に出会うと、恐ろしく危険な状況になります。
もっとも、すごく揺れる船は転覆しづらい意味もあり、乗り心地をある程度犠牲にしても、適当な動揺周期を保持することの必要性は皆さんご承知のとおりです。
漁獲の大小で常に船脚が変化する漁船の復元力を体感的に判断する基準は、まず、「揺れ」にほかなりません。
それはともかく、船員災害で一番恐ろしい海中転落事故も、自分から飛び込まない限り、揺れてさえいなければ、その九〇%は発生しなかったのではないでしょうか。
ここで二、三、海中転落にまつわる災害事例の原因と揺れについて見てみましょう、
海中転落の直接の原因の一つ目として、「甲板作業中、ハンドレールその他の安全設備が十分でなかった」とありますが、それはたまたま事故発生時に船が大きくローリングしたため、被災者は手摺りによりかかったが、そのハンドレールの立ち上がりの溶接部分が腐っていて、そ、のまま海中へ転落してしまった、ということなのです。
この均台、作業の内容にもよりますが、本人の「揺れ」に対する認識不足が問題で、安全ベルトが着用されていてしかるべきでした。
二つ目として「歩み板が完全でなかったか、または設置していなかった」とあり、これも船の動揺でタラップが常に上下動しているという、「揺れ」が介在しているのです。
酒を飲んで船に帰るときなど、自分自身もフラフラと揺れているわけですから、「揺れ」が重なってしまい、大型の外航船での海中転落事故などはむしろこれが多いそうです。
三つ目に、舷側からの用便があげられますが、船が小さいほどブルワークが低く、また、トイレの設備の良し悪しにも関係があるのでしょうが、失礼ながら皆さんご経験のあるところで、足をふんばりスタンションに掴まりながらのそれは、爽快感はあるにせよ、「揺れ」という大きな危険が待ち受けているのです。
これはかなりの頻度で転落事故が発生していますの

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION